2007/04/12

客は甘やかすな

先日の日経新聞に、日本の労働生産性に関する記事が載っていた。
案の定、主要国の中で最低だった。アメリカを100とすると、日本は71(確か)。

例えば、1日働いて、米国企業なら100の利益を上げられるところ、日本企業は71の利益しか上げられないわけだ。あるいは、米国企業では利益を上げられる仕事が、日本企業の手にかかれば、赤字事業になりうるということでもある。

やはりな、という感じだ。
日本に戻ってきて、まず日本の会社で働いて、それからまた外資に移った。外資とはいえ、日本で活動している以上、主な顧客・パートナーは日本企業だ。日本企業の方々は、利益ゼロでもなぜか売り上げだけは上げようとするから面白いなぁと、9割方馬鹿にしながら、ある意味感心している次第だ。

地元のスーパーよりも、隣町のスーパーの方が卵1パック50円安いから、バスに乗って余計な金と時間を掛けて安い買い物をしたつもりになって喜んでいる感じか。うーん、ちょっと違うな。やる必要のない、あるいはやるべきではない余計な事を、わざわざ工数かけてやって、満足している感じ。これだな。こういうのを、「アクティブ・ノンアクション」と呼ぶ(最近知った言葉だ)。

こういう人が大変多い。疲労を周囲に撒き散らすという特徴を併せ持つ場合もあり、そうなるともう手がつけられない。そしてそういう人に限って自分は仕事ができると思っている。しかも、周りも馬鹿だから、この人は仕事ができると信じているケースも、不幸なことだが大変多いようだ。

今、外資系で日本企業を主な顧客として働いているが、こんな人ばっかだ。ビジネスというのは利潤を追求してナンボだということが、頭の中からすっかり抜け落ちてしまっている。利益に興味がないなら、NPOなりボランティア団体なりに参加すればいいだろう。しかし僕等がやっているのは、利益を上げてナンボのビジネスだ。

これこれこういう仕様を要求する、こういう機能が必要だ。そうじゃないと日本市場では戦えない。そんな主張を思いつくままするだけして、じゃあ「その要求の正当性の根拠として、具体的に現時点でいくらのビジネスがあって、今後どれくらいの規模の売り上げが期待できるんですか?それによって対応するかしないか決めますね。」、と至極当たり前のことをたずねると、途端にだんまりだ。下手すると文句が返ってくることすらある。

日本の企業はこういう幼稚な要求にいちいち応えるんだろう。そんなことをしているから労働生産性が恐ろしく低いんだ。

そういうことをしていれば、確かにシェアは伸びるかもしれないが、結局自分で自分の首を絞めてもいる。顧客の要求に全力で応えると言えば聞こえはいいが、対価が期待できないものにまで応えてしまうというのは、明らかに自分の技術・知識の安売りだ。一旦それを覚えた顧客は2度とそこに高い金を払おうとはしない。そしてそこで犠牲になるのはいつも従業員だ。

お客様は神様、なんていうのは、自分達の商品に何の差別化もできないような無能な商人の言葉だ。差別化できる知識・技術・商品を持つプロフェッショナルが、客を正しく導いてやるべきだ。そこで初めて顧客満足が生まれ、win-winの関係ができる、と思うのだ。結果、従業員もHappy。万事OKだ。客は甘やかしてはいけない。

0 件のコメント: